〔プロフィール〕
利部志穂の作品のテーマの一つは記憶です。
既成の物を組み合わせてインスタレーションをする彼女の作品は、
物から発動する触感や形の面白さが自身の記憶と結びつき、
さらに記憶から離れて物に収束していきます。
生成される記憶のダイナミズムそのものが彼女の作り出す空間です。
鑑賞者は過去にあった記憶が、現在との関係によって常に変化していく過程に触れられるのです
〔展示〕
2011年9月2日(金)~14日(水)
12:00~20:00(最終日~17:00) ※木曜日休廊
「採光 - let in light - 」
今村洋平、大田黒衣美、利部志穂、鈴木光、若林勇人
スペースM、S、E
オープニングレセプション:9月03日(土)18時~
〔展示概要〕
例えばこの場所が人の入ったことのない、ただただ広大な荒野だったとして、私たちはここに何を作るだろうか?
アイスを買うコンビニもなければ、離れて暮らす友人に会いに電車に乗ることもできない。
携帯もないので連絡をとることもできない。
昼は35度をこえ、夜は20度を下回り、日陰もなければ雨風をよける屋根もない。
私たちは地面に転がっている石をかき集め、壁を作るだろうか。
大きさがばらばらな石をどの順番で積み上げれば崩れないだろう?
石と石の隙間には土のようなものででも塞ぐだろうか。
からからの大地を掘り起こして、まだ湿り気のある土を探す。
それでも水分が足りなければ雨乞いでもするか、夜空を見上げて星を読み、
あるいは雲のながれを見て天気を予測するだろうか。
土の粘り気はどの程度か、まず手で練って確かめる必要がある。
この5人の作家は個人的な体験や、そこから生まれた謎、問いを一つ一つ自らの手で検証し、
編み出した方法で作品を制作している。
原初的な手作業によるその判断は、深さを追求するあまりとても閉鎖的な一人遊びとも捉えられる可能性がある。
しかし本当にそうだろうか?
私たちは、たくさんの衝突や時間の積み重ねによりここまで繋がれてきた。
今一度この場所で、はじまりの瞬間を感じてもらえたら嬉しい。