〔プロフィール〕
信州出身。雑誌編集者の傍ら写真スタジオで撮影技術を学び独立、フリーランスのフォトグラファーとして活動中。文筆、編集も手掛ける。得意分野はイベント撮影とポートレート。セールスポイントはフットワークの良さと「押し」に弱いところ。
〔展示〕
2021年2月12日(金)~17日(水)
12:00~20:00(水曜日~17:00) ※木曜日休廊
「モノクロームの純真-銀塩回帰の旅-」
今井秀実
スペースS
〔概要〕
「いつか写真展をやってみたいなあ」と思いながら、心のヤルヤル詐欺を延々続け、結局こんないい歳になってしまった。「やろう!」決めて、事務所に近い『新宿眼科画廊』を押さえたのが昨年の8月。「まだ、半年あるさ」と、お気楽に考え構えていたせいで撮影はなかなか進まず、年が明けてから焦り出した。「いつか」では何も生まれない。作品がこの世に出るのは、締め切りがあるから、とつくづく実感する。
さて、記念すべき初の写真展であるが、コンセプトは『銀塩回帰の旅』。銀塩とはフィルムのこと。フィルムの成分に含まれている塩化銀からの名称で、フィルムカメラは銀塩カメラと呼ぶ。現在のスタンダードであるデジカメが普及しだしたのは2000年になってからで、それ以前はカメラといえば銀塩カメラのことだった。当時カメラマンを志す者は、みんな暗室作業を行っていた。デジカメとパソコン同様、銀塩カメラと暗室は切っても切れないセット。小生も部屋の台所を、光が入らないように黒いカーテンで目貼りをして暗室にしていた。今では銀塩カメラで仕事をする機会は全くない。それでも暗室を残しているのは、単なるノスタルジーばかりではなく、暗室作業を通じて、原点を忘れたくない気持ちが強くあるからだ。あの頃に還る『銀塩回帰の旅』。暗室作業の楽しさがプロのカメラマンになった原点である。
銀塩カメラに較べるとデジカメは、本当に便利な現代の機器である。デジカメでは撮ったらすぐ画像をチェックできるし、明るさや色合いもパソコンで補正できる。「写っていない」という失敗はデジカメにはない。銀塩の場合、現像するまで写っているのかわからないし、フィルム現像でしくじったら一巻の終わりである。大事な写真が写ってなくて、ショックで廃業したカメラマンも何人か知っている。デジカメなら何カットでも撮れるのに、銀塩では撮った分だけ経費がかかる事情もあって、撮る枚数が限られている。シャッターを押す際の集中力が高いのである。しかも、銀塩は修整ができない。純真とは、純粋と真実を組み合わせた言葉。面倒くさいし、フットワークもわるいし、嘘もつけない。そんな古風で不器用なヤツだから『モノクロームの純真』。銀塩はかわいい。
開催を決めた頃は「100人撮る!」と大口をたたいていた小生だが、2021年になってもなかなか作品が進まず。そんなだらしない小生を見かねてか、ゴールデン街行きつけの店のKママが、お客さんにハジから声をかけてくれ、最終的には90人以上を撮ることができた。100人にはちと足りなかったが「アラハン(ドレッド)」ということで、ちゃっかりタイトルに「100人」を入れさせていいただく。
(ポートレイター・今井秀実)