〔展示〕
2021年11月6日(土)~17日(水)
12:00~20:00(水曜日~17:00) ※木曜日休廊
「回転と痕跡 : 球体の家 2017-2021年」
永岡大輔
スペースO
〔概要〕
永岡大輔による個展「回転と痕跡 :球体の家 2017ー2021年」を開催いたします。
永岡による「球体の家」は、球体型の家を実現し、そこでの生活を検証するプロジェクトです。本プロジェクトが開始してから約5年間の歩みを概観するものです。
このプロジェクトの目的は、一本の線を引くこと。絵を描く者として、これまでにない線を引くにはどうすればよいのか、すなわち生活そのもの、生きることそのものを表す線を引くにはどうすればよいのか——その答えを求めた結果、このプロジェクトに辿り着きました。もし私たちの住む家が「球」であったなら、住人が動くたび、家は緩やかに回転します。食事をしたり、笑ったり、喧嘩をしたり、寝返りを打ったり。そんな日々の営みが家を転がします。そこに生きた事実が、回転となり、痕跡となり、大地に線を描くのです。
プロジェクトを始動してまもなくわかったことは、私たちの知識や認識がいかに偏っているかということでした。球体の家の社会では、「生きる」ことは「移ろう」ことと限りなく同義となります。そこでは、私たちが固執している「所有」や「定着」の価値観は一変するでしょう。家には装飾性よりも機動性が、拡張よりも凝縮が求められます。地震や津波などの災害時には、住居ごとそれを回避することができるかもしれません。汎用性に富んだ家具や生活用品がよしとされ、快適さや便利さの意味するところも転じます。土地を所有するという概念もなくなり、社会のデザインや経済のシステムが、ひいては人々の思想までもが既成社会とは全く異なるものとなる可能性が潜んでいます。
それゆえ、このプロジェクトでは、球体の家を完成させるだけでなく、球体の家の社会における農業や産業の在り方、食の術、コミュニケーション方法といったあらゆる事象を検証することが重要だと考えています。それは、方形の家を基本とする現在の社会では「見えていないもの」を見る、ということでもあります。例えば、プロジェクトの一環である「雑草研究所」はいわゆる「雑草」を観察する取り組みですが、人間側の営みの基本的条件が変わったとき、雑草は「邪魔者」ではなく「共生者」となります。また、不規則に転がる床の上で複数の人間がともに過ごすには、互いの存在を感知し、言葉ではないコミュニケーションを交わし続けることが必須となります。このような意味において、球体の家は、生きることをより強く実感するための装置であるともいえます。
〔企画、主催〕
Little Barrel(水田紗弥子)
〔助成〕
ARTS for the future!
Creator
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NAGAOKA Daisuke / 永岡 大輔
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Little Barrel
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MIZUTA Sayako / 水田 紗弥子